口に入れるとじんわりと優しい甘さが広がる松波飴。奥能登の先端、のどかな懐かしさがあふれる松波の集落で、今も手づくりである。
松波飴の材料はいたってシンプルだ。うるち米とおやし。おやしとは、発芽させた大麦を槌で叩いて粉末状にしたもの。この準備も手作業になる。
2日掛かりの釜炊きは、お米の蒸しあげから始まる。水を張って適温に冷めるのを長年の経験を積んだ掌で見極めたら、おやしを入れ、一晩寝かす。翌日、麻袋に詰めて絞り、取り出した醗酵汁を大釜に戻したら、煮詰めていく。その間のおよそ5時間はつきっきりになる。

集落のお年寄りなら、「子どもの頃おばあちゃんが作ってくれたあの味、思い出すな」と、家々で作られていた頃を語ってくれる。しかし五百年以上の歴史を持つ松波の飴も、三十年前には一軒のみになった。3代目のヨシ子さんを、千四吉さんが継ぎ、今は2人で釜場を守っている。
千四吉さんは大釜で煮詰まる飴をしゃもじで何度もすくっては、色と粘り具合を見計らう。ヨシ子さんが冷水にひとしずく落とし、小さく丸めた飴は、透明な金色に美しく輝いた。出来立ての柔らかな甘さは限りなく優しい。
自然素材の飴は、料理にも重宝される。魚の煮付けなら、飴を少し入れる程度で味付けは十分。飴だけでみりんと砂糖の代わりをしてくれる感じ。魚に照りが出て、身もしまり、美味しく仕上がる。黒豆や煮もの、ジャムづくりにもおすすめだ。
また、生の大根の輪切りに飴を乗せて浸けておくと、汁が出る。風邪でのどが痛いときに、その汁を飲むのは昔ながらの知恵。妊婦さんへのお土産として今も人気なのは、こうした使い方があるため。
知恵と技が詰まった懐かしい味は、親から子へと受け継がれた昔ながらの製法と手仕事によって守られている。
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