 世界中の醗酵食品を研究する小泉武夫教授は、能登半島を「醗酵半島」と呼んだ。能登には、それほど発酵食品の伝統と文化に育まれた土壌があるからだ。
中でも魚醤油は、アジア各地には伝統的に見られる中、日本国内の古くからの生産地は、ほぼ3箇所に限られ、そのひとつが能登なのである。
魚醤いしりは旨み成分が非常に多く、香りが特徴的な個性ある調味料。しかし、近年の食生活の欧米化や食習慣の変化などにより、奥能登においてすら、家庭の台所からこの地元の伝統的な調味料が消えつつあるのが現状である。
 そこで、現代の暮らしにも使いやすいいしりを提供し、地域の食文化を見直してもらおうと開発に取り組んだ。
鍋ものなどに使いやすいぽん酢へのアレンジをはじめ、調味済みのドレッシングタイプも開発。原液のいしりも、核家族化で従来のような大型ビンは好まれないことから、小容量のボトルを採用。食卓にも置いてもらいやすいサイズやシェイプを重視した。
 いしりの原料はイカ。マイカ(スルメイカ)が一番よく、仕込む時期はやはりイカの旬の時がよい。醗酵させる場所は山がよい。風が舞わないところの方が醗酵が安定して進む。3年ものの「3年熟成」はまろやかさにこだわっている。1年目は外で醗酵させ、2〜3年目は暗いところに置いて動かさない。照明もつけないのがよい。最初の年は攪拌を繰り返す。1年目でほとんど分離するので、脂分は1年目で取り除いてしまう。最後の煮沸は薪がよい。いしりの製造は、自然と一体で進められる。
健康志向の高まりを受け、また食育でも日本の優れた食文化、地域食を見直すという視点から、いしりは注目を集めている。
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